ラスト15分以外最高だった映画ドラゴンクエスト ユア・ストーリー
好きなゲームは何かといわれたら、真っ先に思いつくのがドラゴンクエストシリーズで、これまで10作品以上プレイしてきました。中でもドラクエ5は壮大なストーリー性から非常に評価の高い作品で、プレイしてきた人も多いナンバリングだと思います。
そのドラクエ5が2019年に映画化されたのですが評判がすこぶる悪く…Netflixで配信されているのを観ました。自分も見終わってからその低評価の嵐に納得しました。
※この記事はネタバレを含みます。
映画のあらすじ
名作「ドラゴンクエストⅤ天空の花嫁」を3DCG映画化した、本作「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は原作をベースにした別作品です。後述しますが原作ベースだけど全く別作品であることが、大きく評価を割った点です。
主人公がターバンの青年で名前はリュカ。原作で特定の名前は決まっていませんが、リュカは1993年のドラクエ5小説版からとられたものです。小説も小学生のころにゲームをクリアした直後に読みましたが面白かったです。
あらすじは少年リュカ(主人公)が、パパス(父)を光の教団ゲマに殺され、10年間教団の奴隷として働くところから始まる。
共に囚われていた友人ヘンリー王子と命がけで脱走した後、マーサ(母)の救出とパパスの仇を討つため旅に出る。
ある街で、勇者の剣を所有する大富豪ルドマンの依頼を、娘フローラとの結婚を報酬に引き受ける。しかし依頼達成後にリュカは本当の自分の気持ちに気づき、フローラとの婚約を解消して、幼馴染のビアンカと結婚した。
子供を授かるが再びゲマと対峙し、リュカはゲマの魔法によって7年間石にされてしまう。成長した子供アルスが石化したリュカを助けに来て、親子3世代にわたる因縁の果て、ゲマとの最後の決戦に挑む。
このような流れで大筋は原作通りに進行。細かな相違点や省略された部分は多いですが、映画1本で重要な局面を抑えながらきれいにまとめられています。
3DCG作品として良い映画
本作のネガティブな意見はほぼラスト15分に集約されており、それ以外は肯定的な意見が多く私もとても良い映画だと思ってました。
ラスト15分まではドラクエ好きとしても納得のいく完成度でしょう。
スピーディーなストーリー進行
映像化した際に物語として映えるようなシーンを厚く描いて、主人公の強さ的な成長や旅路をあっさりと進行させています。
ドラクエファンが熱く語るに尽きない結婚イベントが、映画ではしっかりと物語になっており、全体は急ぎ足でスピーディーな展開だけど緩急があって良かったです。
キャラクターデザイン
最初は海外風の雰囲気に違和感がありましたがすぐに慣れてきます。むしろなめらかな動きや、豊かな表情など魅力的でした。
とくにビアンカのキャラデザが良い。溌溂とした性格と乙女な側面が、イメージにぴったりです。ゲマに囚われて呪文を連発するシーンの棒読み感は否めなかったけど…。
逆にリュカの冗舌な滑稽キャラは、勝手に想像していたイメージとは正反対で少し感情移入しにくいです。ドラマ版「勇者ヨシヒコ」はドラクエ5をモデルに、おちゃらけたキャラを演じているので、共通したイメージはなんとなくあるかもしれません。
戦闘シーン
CGによる呪文の演出、キャラクターの激しい動きなど戦闘シーンの迫力がありました。
ドラクエのゲーム原作も年代が新しくなるほど演出が綺麗になっていきますが、やはり映像作品にはかなわない。
ドラクエならではのバトル描写と、ドラクエ5特有のヒューマンドラマが繊細な表情で描かれたこと、3DCG作品として文句なしの良さでした。
映画全体を台無しにしたラスト
敵として立ちはだかるゲマの目的は天空人であるマーサ(母)の力を利用して、大魔王ミルドラースを復活させること。
最後の決戦で勇者の息子アルスたちと見事ゲマを打倒するのですが、ここから本作の地獄が始まります。
世界観ぶち壊しのメタ展開
突如世界が停止してリュカの目の前に現れたミルドラースは大魔王…ではなく、コンピューターウィルスと名乗る世界観を逸脱した存在。
我々はずっとドラクエ5の映画を観ていたと思ったら、真の主人公はドラクエ5をVR体験でプレイする一般人という設定です。
つまり1時間半近くもドラクエの世界を視聴者に見せつけながら、最後の手のひら返しで「これ全部ウソでした、ゲームの世界の話でした」と虚を突く展開に誰もが戸惑うでしょう。
真意不明のメッセージ
「大人になれ」このセリフが多くの視聴者の反感を買ったと言われています。
制作者がどのような意味を込めたかわかりませんが、素直に受け取るならば、大人になってもゲームに熱中してる人間に対しての嫌味と感じました。
最後の展開によって物語序盤の幼少時代がスキップ演出されたこと、結婚相手を強引にビアンカに乗り換えたことに辻褄が合いますが、なくても問題ない不要なラストとなってしまってます。
ドラクエファンが喜ぶ作品で突き通してほしかった
あくまでもドラクエ5の映画化ではなく、ドラクエ5を土台にした「ユア・ストーリー」にしたかったのでしょう。
ゲームのプレイヤーを主人公たらしめるインタラクティブさから、主人公であることを実感できる画期的なアイデアとして採用されたラスト、らしいが余計なお世話である。
単に物語をなぞるだけなら映画にする意味がないとのことですが、ゲームでは表現できないイベントの行間やら文脈を映像にする価値が十分にあるはずです。そしてラストまでは本作がその価値をしっかりと発揮していたと思います。
なによりゲームを知らないと分からない展開とキーワードが頻出するので、ドラクエファンでないとついていけない構成になっており、映画のターゲット層がドラクエファンであることは明らか。それなのに「ゲームなんてしてないで大人になれ」と最後に突き放されたら、こちらも拒絶反応を起こしたくなるもの。
メタ的な要素を取り入れてドラクエを材料にした展開は良いアイデアだったのかもしれないが、種明かしのタイミングが悪すぎて白けてしまったのが正直な感想です。
ドラクエファン向けの映画なのか、一般向けなのか、結果的に誰にもささらない映画になってしまってるなと感じました。
コメントを残す