一度別れて記憶を消してまた出会ったら「エターナルサンシャイン」
失恋の痛みを忘れるために記憶を消したとしましょう。そして偶然また2人が出会い恋に落ちるとします。一度別れたことから相性が良くないことは実証済みだけど、出会った頃の気持ちも本物である。
そんな2人の出会いの輪廻を巧みな構成で、映画ならではの表現を駆使しながら名作となったのが「エターナル・サンシャイン」です。
強くおすすめされたので観てみましたが本当に観てよかった作品です。脚本がすごいと聞いており、時系列も行き来すると分かっていたので、かなり集中してみていました。
エターナル・サンシャインのあらすじ
バレンタインの日に主人公ジョエルは、元恋人のクレメンタインが自らの記憶を消す手術を受けたことを知る。それに対抗するように、彼も記憶を消す手術を受けた。
施術中は昏睡しながら消したい記憶、つまりクレメンタインに関連するエピソードをすべて追想していく。記憶が一つ一つ消されていくが、ジョエルはやはり「記憶を消したくない」と昏睡しながらもわずかな抵抗を試みる。
しかしそんな抵抗もむなしく、最終的にジョエルはクレメンタインと同じく、2人の思い出をすべて消去してしまった。
翌日、何事もなかったかのように朝を迎えたジョエルは、なぜか会社とは反対の列車に乗りこむ。何かに引き寄せられるように、目的はないのに自然と体がどこかへ向かおうとする。
そこで出会ったのがクレメンタインだった――。
出会い直す尊さ
この映画は終盤まで見てやっと時系列がわかる構成になっており、その巧みな見せ方が第77回アカデミー賞で脚本賞を獲得した所以でしょう。
序盤だけを見ると女性のクレメンタインから積極的にアプローチする不自然さ、ジョエルの突発的な行動の真意などが分かってきます。
一度記憶をなくしても再度運命に導かれて恋に落ちる。それだけでもロマンチックですが、この映画はさらに一歩踏み込んでます。
喧嘩別れをしたなら、また運命的な再開をして付き合い始めても、別れることに変わりはないでしょう。それでもジョエルとクレメンタインはもう一度その道を辿る可能性が高いことを承知の上で付き合います。
この「出会い直し」でありながら「コンテニュー」ではない無慈悲さが、かえって真の愛を示そうとしているようでした。
映画ならではの構成によって、時間軸を前後させたり、記憶の断片をつぎはぎしたりと、映像表現がたくさん盛り込まれていて「良い映画を観た」という感想が一番しっくりきます。
2004年に全米公開されてから20年。世界的映画レビューサービスLetterboxdが今年5月に発表した「最もファンの多い映画ランキング」では6位にランクインしています。
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